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久しぶりにダイアナ・クラールを聞く [ジャズ関係]

 朝から雨風強い平日の朝。読みかけのミステリー小説も残り100ページあまりとなり、今日は午前中で最後まで読み切ろうと取り掛かる。大変面白い展開で、このまま進めてゆくはずだったが、ふと窓の外の強い雨がなにか気になる。
 午前9時前、この日は予定もない。雨は昼頃までという予報。このまま本を読めたはずだが、何かそわそわするというのか、けだるさもあり、本はいったん中断して音楽を聞くことにした。特に何かというイメージはなかったが、先日来から聞こうと思ってたダイアナ・クラールをチョイス。

 その選択に関しては、先日図書館で借りた本のことがあった。読んでたのは、「エルヴィス・コステロ自伝(Unfaithful Music & Disappearing Ink)」という本。コステロが2015年に執筆期間10年かけた初の自伝で、なんと翻訳本は755ページもあり、本自体の重量もすごい。コステロの音楽は2000年前半までアルバムはほぼ聞いており、80年代初期の作品は思い入れもあるので、手に取ってみたが、読むのは難航した。話が時系列に進まず、時間軸が入り乱れ、家族の歴史的な部分や歌詞の言及も多く、なかなか手ごわい一冊で、飛ばし読みしながら読んだ。とはいえ、各種のエピソードは大変興味深く、驚きの内容もいくつかあり、また自分のイメージしていた部分と異なる感性も見え、参考になった。その自伝の中で、登場してきたのが2003年にコステロと結婚したダイアナ・クラール。

 読み終えて、そういえばダイアナ・クラールは久しく聞いてないなと思った。2000年前後のアルバムはいくつか聞いたが、彼是10年近くご無沙汰してたので、ちょうどいい機会だからこの午前中の雨の日、寝っ転がりながら聞いた。
 
 当時の印象は、心地よくリラックスできる作品だが、強い印象は希薄な感じだった。
 今回聞いた1999年のアルバムは、ダイアナの歌とピアノ、ギター、ドラム、ベースというフォーマットものとストリングスのアレンジを加えた作品が入ってる。軽いスゥイング感やゆったりとした流れ。窓の外は強風雨だが、音楽は緩く流れて気分も緩まってくる。以前聞いたときは、表面をなぞるように聞いてたのかもしれない。曲のくつろぎ感に自分を委ねきれなく、どこか生硬さが残ったまま接してたのだろうか。

 聞いてるうちに時間が間延びしてゆく。外の世界の雨風の強い時間が遠のいてゆく中、だんだん緩くなってゆく。とりわけいい塩梅に感じたのはマイケル・フランクスの「Popsicle Toes」。この曲、Mフランクスが1975年「The Art of Tea」に収録した曲で、このポップチューンをなんともジャズっぽく、軽やかに仕立てる。この曲の中間部におけるラッセル・マローンのギターもいい。

 結局、何もしないまま、アルバム全曲1時間ほど聞いてしまった。
 聞き終えてヘッドフォンをとると、相変わらずの強風と雨。さて、と起き上がり、コーヒーが飲みたくなった。いつもは午前中のコーヒーは朝の一杯で済ませてるが、この日は、もう一杯淹れることにした。そんな午前中だった。

CD:When I Look in Your Eyes/ Diana Krall (1999,Verve)
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シューマン:交響曲第3番/日本フィル [コンサート(オーケストラ)]

 前回の公演が印象的だったのでブログに書いたが、今回はそれ以来となる来日。4年ぶり3度目となるリープライヒの日本フィルとの共演を昨日聞いてきた。

https://presto-largo-roadto.blog.ss-blog.jp/2019-03-17
https://presto-largo-roadto.blog.ss-blog.jp/2019-12-08

 前2回もプログラミングが多彩だったが、今回も多様で、前半の三善晃、シマノフスキの曲は初めて聞く曲となった。

 前半2曲はなかなか複雑で、シマノフスキのヴァイオリン協奏曲は25分程度の曲ながら単一楽章という独特さ。メロディーが見えにくく掴みどころが難しかったが、中盤以降少し寄り添えた感じもあった。

 後半はシューマン交響曲。しかしこの曲のみならず、シューマンの交響曲はなかなか聞くのが難しい。分かりにくさではなく、どこか上滑りしてゆく感じがある。集中して聞こうと構えてみるものの、音が身体をかわしてすり抜けてゆく、そんな感じがこれまで何度かあった。

 そんな中、休憩中プログラム読んでたら、ライン川沿岸をよく散歩したり、ケルン大聖堂の荘厳さに感動したこと、ケルンの旅の印象などが反映されてること、作品モデルにベートーヴェンの交響曲6番があったのでは、という箇所を読んでると、こういうイメージとともに聞けばいいかもと、感じた。
 冒頭から川沿いを散歩するイメージを作りながら、聞いてみる。第2楽章~3楽章の緩徐楽章の穏やかな流れはナチュラルに入ってくる。そして全体の中でこの第4楽章だけ雰囲気が違うのが、ここがケルン大聖堂の荘厳さの印象から作曲された重厚な楽章となってることが、イメージとして事前に入ってると違和感はない。リープライヒの音はゆったりと広がりを作り上げ、生き生きとした曲の感覚を扱いながら最後まで進んでいった気がした。
 事前にイメージや曲の背景を持って入ったこともあり、これまで遭遇したような上滑り的な感覚の再現は、この日出てこなかった。

 作曲家や背景のことを知らないでも真正面から音楽だけに対峙するスタンスは重要と思うが、時には背景を丹念に調べることで、豊かに聞けることもあるだろう。この日の自分自身も前半の難解な曲にどうもフィットしてなく、適度に緩い気分が存在してたのだろうが、シューマン交響曲を今回そうした緩い感覚とともにうまく聞けたようだ。

 さて、日本フィル2024/2025年シーズン定期演奏会の日程発表されたので見てみたが、来年もまたリープライヒの指揮が入ってる。プログラムをみると、全4曲中知らない曲が3つ・・・またまた多彩なプログラム、非常に楽しみである。

指揮:アレクサンダー・リープライヒ/ 日本フィルハーモニー交響楽団
2024/3/23日本フィル定期演奏会 サントリーホール
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NHK-FM「洋楽グローリアスデイ」の番組終了について [DVD・テレビ・ラジオ]

 よく聞いていたFM番組「洋楽グロリアス デイズ」が今月をもって終了することが、HPに掲載されていた。たいへん残念である。

 毎週日曜日の16時から70年代、80年代、90年代の洋楽ナンバーが聞ける1時間の放送番組で、DJの片寄 明人さんの選曲や短いコメントとともに音楽中心にゆったりと聞ける数少ない番組だった。 
 最近はラジオ番組の「聞き逃し配信」などがあるので、期間内なら自由に聞ける環境整備が増え、それはそれで助かるのだが、この番組はオンタイムで毎回聞いていた。毎週の日曜日16時にラジオの前に座り、1時間過ごす、そんな時間。決まった時間に、毎週聞くという習慣を持つことで、日々の生活の中に、メリハリや生活のリズムを与えてくれたと思う。

 聞き始めたのはいつからだったか正確には覚えてないが、3~4年前から聞いてたと思う。休日洗濯を終え、翌週の仕事に向けワイシャツのアイロン掛けをするとき、音楽でも聞こうとラジオで番組探してたら、この番組を知ったのがきっかけだった。それが何度か続いてくるうちに、アイロン掛けは日曜16時から、FMを聞きながら、という定番作業化していった。また夏場の猛暑の時期には、ラジオで聞き終えた後、多少涼しくなった近所の散歩を30分ほどする、という組み合わせも、季節限定で定番化された時期もあった。

 面白かったのが、リスナーからのリクエスト曲。かなり自分と近い年齢層が聞いてるようで、一つのリクエスト曲と短いコメントの中にその人の記憶の風景がかいまみえるようなことが何度かあった。
 2年前には自分のリクエストした曲もオンエアされたことがあった。動画配信や検索で気軽に聞ける状況の中、あえてラジオにリクエストする、ということは個人的なニーズ以上に、リスナーにも記憶を思い出してもらえるような曲であれば、というようなことを考慮して選んでみた。すっかり忘れていたけど、聞けばああそんな曲あったよね、という感じ。ちなみに、リクエストした曲は1982年ポール・デイヴィスの「クール・ナイト」という曲。あまりメジャーな曲とはいえなくても、しかし当時の時代の空気感をうまく反映したような曲を探し、また自分自身も忘れていたくらい聞いてなかった曲だったので。

 この番組をきっかけに、特に80年代の洋楽を聞き直すことがここ数年増え、懐かしさとともに、気が付かなかった再発見も多く見つかり、このあたりのことは「昔聞いたアルバム」というカテゴリを作り、このブログでの何度か書いている。番組は終わってしまうが、こうした掘り起し作業は今後も自分で続けていくと思う。放送が残り数回となったが、そういうきっかけを与えてくれた「洋楽グロリアス デイズ」には感謝したい。
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テレビ番組「アナザーストーリーズ」より:ボブ・ディランのこと [DVD・テレビ・ラジオ]

 一昨日、NHKで放送されたテレビ番組「アナザーストーリーズ 運命の分岐点」で、ボブ・ディランを取り上げたので見てみた。ディランの話の中では必ずと言っていいほど言及される1965年「ニューポート・フォーク・フェスティバル」の映像があり、これは初めて見た。
 自分にとってのディランはこの1965年以降の音楽がメインとなっていったこともあり、その分岐点というステージは感慨深いものがあった。一方でそれ以前のフォークミュージック時代やその背景はあまり意識しておらず、また近年のノーベル文学賞に受賞した経緯なども知らなかったので、初めて知ったこともいくつかあった。

 久しぶりに映像など見て、改めてこの時期のディランが最も自分に影響を与えていたことなど、いろいろ想い出したりしていた。この時期の作品として3枚のアルバム(1965年の「ブリンギング・イット・オール・バック・ホーム」、「追憶のハイウェイ61 」、1966年「ブロンド・オン・ブロンド」)にはいずれも多大な影響を受け、以前もこのブログで書いたことがある。

https://presto-largo-roadto.blog.ss-blog.jp/2018-10-28

 振り返ってみると、ディランのアルバム、ライブ盤、ブートレグシリーズなどはこれまで20作品以上聞いてきたので、長く深い付き合いがあるのだが、特に20代の多感な時期には大きな影響を受けた。当時ディランの歌詞や言葉を読み、その言葉が生み出す自由奔放なイメージに魅了された。とりわけ上記の3枚のアルバムのいくつかの曲(「廃墟の街」、「ローランドの悲しい目の乙女 」「ジョアンナのヴィジョン」など)から繰り出される言葉の数々が、無限の積み重なるようなイメージを生みだし、目がくらむような思いをしながら、必死に自分の中に取り込もうとした時期があった。一方で、意味の不明瞭な言葉やひたすら畳みかけるような、ある種ラップのような言葉たちにも眩暈を覚え、それは例えばアルバム「ブリンギング・イット・オール・バック・ホーム」冒頭の「サブタレニアン・ホームシック・ブルース」での攻撃的な言葉に打たれた衝撃もあった。

 今回の番組を見ながら、あらためディランの物事に逆行する姿勢、反逆者としてのスタンスが印象に残った。フォークミュージックという足場から始めたが、彼の本質は一か所にとどまることでは充足できなかったのだろう。だからその後も音楽の関心は変化し、フォーマットも様々変遷してゆくわけだが、しかしライブやツアーを通じた伝道者として続けている、そんな姿がある。

 昨夜はそうしたことを考えつつ、久しぶりにディランの音楽を聞きながら、過去の自分の振り返りながら酒を飲んでいた。しばし忘れてたことを思い出し、再生され、当時の感覚がよみがえってきたりしながら。

NHK総合テレビ:アナザーストーリーズ 運命の分岐点
「ボブ・ディラン~ノーベル文学賞 原点のステージ~」
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リー・リトナーのギター [ジャズ関係]

 音楽の最初期に出会ったのがラリー・カールトンだったこともあり、同時代的なギタリストのリー・リトナーにも興味は向かったのは当然のことだった。
 リー・リトナーのアルバムで最初に聞いたのは1981年の「RIT」。しかしこのアルバム、ギターが前に出るより、ヴォーカル(エリック・タッグ)がフューチャーされたAORテイストの内容だった。シングルカットされた「イズ・イット・ユー」は爽やかで心地よいAOR系の曲で当時好きな曲ではあったのだが、ギタリストとしてのリー・リトナーという点に関しては薄い存在と認識してしまった。
 こうしてその後は関心も発展しないまま長い時間が過ぎていった。

 それでも最初に聞いてから40年近く経つなかで、何枚か聞くうちに変化が生じてきた。特に近年、いつの間にか聞く機会が増えてきたこもあり慣れてきたのかもしれない。全般的に感じるのは形式やフォーマットにこだわらなく、曲自体を引き立てるようなギター、というのが特徴だろうか。1993年にはウエス・モンゴメリーのトリビュート、 1997~2003年には「ツイスト・オブ・ジョビン」、「ツイスト・オブ・マーリー」、「ツイスト・オブ・モータウン」と多方面の音楽との接点をつくり、特にブラジル音楽との関係は随所にでてくる。

 この人の作品の特徴をよく反映したアルバムに1998年発表の「ディス・イズ・ラヴ (This Is Love)」を挙げられるだろう。心地よいサウンドものに加え、レゲエ調、ダンサブルな音など、聞きやす中に躍動感がある。そして取り上げたカバー作品が4曲あり、
ソニー・ロリンズの2曲(Alfie's Theme、Street Runner)、クラシックの曲(フォーレの"Pavane")もあるが、中でも一番意外に思ったのは、シンガーソングライターのランディー・ニューマンの1970年代の作品("Baltimore")まで広げてる。ただ多方面からの曲を取り上げてるが、原曲に忠実というよりリー・リトナーのサウンド体系に置き換えられたサウンドになり、フォーレのパヴァーヌは冒頭はクラシカルな入りだが、中盤からはコンテンポラリーサウンドに様変わりしてゆく。

 「ツイスト・オブ・マーリー」(2001年)もボブ・マーリーの作品トリビュートなのだが、レゲエ色はあるものの、基軸にコンテンポラリーな音作りが入るので、割と普通感覚で聞ける。
 
 気楽に音楽聞きたいシチュエーションが増えてきたのか、近年リー・リトナーを軽く聞き流すことが多い気がする。そうして繰り返し耳にしてると、この曲の良さを引き立てるギター、何ともいいなあと感じる最近である。

CD:「This Is Love」/Lee Ritenour(i.e. Music、1998年)
  「A Twist of Marley」/Lee Ritenour(GRP、2001年)
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