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バーバー/ヴァイオリン協奏曲 [コンサート(オーケストラ)]

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 一週間前に、急遽この日のコンサートを聴きにゆこうと思った。今までコンサートで聴くチャンスのなかったバーバーのヴァイオリン協奏曲。この曲を聴ける機会は多くないという理由もあるが、それ以上に、今聴けそうだし、とても聴きたい、と強く思った。
 最初にこの曲を聴いたのは随分前のことになるが、簡単に、すんなりと入ってきた曲ではなく、むしろ難解な印象があった。そのままの状態で留保してきたのだが、やがてバーバーの交響曲などを聴くにつれ、次第にこの作曲家の印象が徐々に形成されてきはじめた。こうした過程を通じてゆく中で、この作曲家と自分の距離感が思っていた以上に、遠くないものだと気がつき始めてきた。
 最初に聴いた時とは、きっと違う聴き方ができるのではないか、そんな思いの中で今回ヴァイオリン協奏曲を聴きにでかけた。

 この日のコンサートの冒頭は、ペルトの「フラトレス」。1977年に作曲された作品であるが、難解さはない。弦楽器と打楽器のみの編成で、反復される音を聴くことで、何かの音像をそれぞれの内側にみつかるかのような曲だった。

 そしてこの日、期待してきたヴァイオリン協奏曲。曲の期待とともにこの日の独奏ヴァイオリン奏者、ナージャ・サレルノ・ソネンバーグ、がどんな演奏をするのかも楽しみだった。
 
 第1楽章冒頭からヴァイオリンの音色があっという間に心をとらえる。心に触れてくる叙情性豊かな音色。そしてクラリネットのアクセントを付けるフレーズが何度か繰り返し登場。単一の方向に向かう明快な流れというものではなく、どこか揺れを含んだ変化の中を動いてゆく。中盤にはオーケストラの音とともに展開が生まれてゆく。ところどころに入ってくるピアノの音も非常に効果的。
 変化してゆく様々な感情の彩りが、多方向に放たれてゆくが、曲のもつ振幅に追従してゆくことは十分できる。

 第2楽章の開始は印象的なオーボエの音。この楽章は、事前のCDではあまりうまく聴けなかったのだが、やはりコンサートホールの空間に放たれた音の広がりの中で聴くと、印象は違ったものだった。
 全体的に静的であるが、ゆったりとはしていない。どこか張り詰めたところがあるような気がするが、抽象的さや難解さではない。決して甘くはないが、ときおり現れて来る叙情性が全体を包み込む。

 そして短い終楽章。冒頭から高速の動きが独特。この動きがそのまま持続し、ほとんど展開することなく、一気に駆け抜けてゆく。

 協奏曲は独奏楽器とオーケストラのどちらに焦点を当てて聴くのか、いつもバランスが難しいのだが、この日の演奏は最初から最後まで途切れることなく、一気に聴きとおせた。
 ナージャのヴァイオリンはCDでも聴いていて、また2009年にはブルッフヴァイオリン協奏曲を聴きにいっている。こうした中で今回の演奏を聴いてみたが、バーバーの曲とは非常にうまく融合しているというのか、波長がよいのだろうか、集中力の高い演奏だったと思う。アップダウンや変化が少なくない中で、エネルギッシュな表現と同時に抒情性も十分あった、本当に素晴らしいものだった。

 バーバーの作品のイメージを言葉にするのは簡単でないのだが、確実に自分の中には何らかのイメージが徐々に熟成されてきているような気がしてならない。

2012/1/29 NHK交響楽団 定期公演 NHKホール
コメント(4) 
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コメント 4

JBLman

ブログがないのでWebから失礼。PCオーディオという便利な時代で、仕事の合間にヴァイオリンに熱中してますが、バーバーの叙情豊かなヴァイオリン協奏曲にいたみいりました、Gilmanという若手の演奏CDですが、ハツラツとしていいです、座右の名盤に仲間入り。インターネット時代で全く知らなかった名曲が出るわ出るわで、ベートーベンなどと並び称されないのが不思議な凄い作曲家がいるもんで、メトネル、ステンハンマールにも傾倒中です。知られていない曲ほどYouTubeで聴けるようにすればと思うんですが、そ〜ユーノに限って著作権とかで削除されて、いい音じゃないんだからカタログくらいに思って大目ににみればいいのにとおもいますが。YouTubeで知ってもうかなりな数CD買い込みましたよ。知られざる名曲探索へ...
by JBLman (2014-04-28 18:58) 

プレスタルゴ

コメントありがとうございます。GILMANという人、知らない名前でしたが、チェックしておきます。
最近当ブログでも、20世紀の作曲家を取り上げる機会が多くなってますが、こんなにいい音楽が埋もれ気味になっているとは、と思うことが少なくありません。

メトネルはずっと気にかけているのですが、未だに聞いてなく、でもいつか機会あれば、と常々思っています。
by プレスタルゴ (2014-05-04 09:47) 

lyra

バーバーのバイオリンコンチェルトいい曲ですね。
とくに2楽章のオーボエのメロディーは抒情的で美しく心に沁み入ります。
先日のラジオから流れた演奏がとてもよかったのですが、私が聴いたのはミハイルシモニアンという若手のバイオリニストでした。デビューCDのようですが素晴らしい演奏です。
https://www.youtube.com/watch?v=c5evYeFiBkc
ギルシャハムもさわやかでいい演奏してますね。
それにしても「たどり着いたら、クラシック音楽」というタイトル♪同士をみつけたようでうれしかったです^^
by lyra (2015-03-15 11:23) 

プレスタルゴ

コメントありがとうございます。
早速YOUTUBEで見てみました。久しぶりに聴いて、この曲改めていい旋律だと思いました。知らないバイオリニストでしたが、音色もなかなかよかったです。

クラシック音楽にたどり着き、そこでいろいろな音楽と出会い、最近は以前聴いた音楽を聴き直すことが多いのですが、再発見もけっこうあります。クラシック音楽を通過したことで、やはり音楽全般に対し聴くポイントが広がったのでしょう、そんな気がしてます。


by プレスタルゴ (2015-03-22 11:10) 

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