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ショスタコーヴィチ交響曲 第13番「バビ・ヤール」/NHK交響楽団 [ショスタコーヴィチ]

 第13番「バビ・ヤール」は、2019年に以来2度目。
 ナチスによるユダヤ人虐殺の件が作曲経緯に関わってることもあり、ヘヴィーな部分があって、気軽には聞けない曲ではあるのだが、貴重な機会であるのは間違いないので、先日聞きに行ってきた。

 プログラム前半はヨハン・シュトラウスIIのワルツと、ショスタコーヴィチの「舞台管弦楽のための組曲」というライトな音楽。後半の重たさを控えたせいもあったのろうが、この前半の軽やかさは音楽に乗れた感じだった。ショスタコーヴィチの短い管弦曲はフロントにアコーディオンとギターが置かれ、一回聞くと忘れられないメロディーが物憂げに、軽快に、表層的に流れ去ってゆく。この軽妙なサウンドもまたショスタコーヴィチらしい側面。

 そして後半は雰囲気も異なる男性合唱団とバスの独唱を加えた交響曲。
 特に第1楽章は重いのだが、印象的だったのは第2楽章と第5楽章。第2楽章「ユーモア」は第1楽章のムードから一転し、スケルツォ的。バス独唱と合唱の対話のような掛け合い、打楽器などのリズミックさも加わり、テンポも早めで、この交響曲の強いアクセント機能を感じられた。
 
 そして再び重いながれの第3~4楽章を経て終楽章の第5楽章「立身出世」に入ると、軽やかなフルートが不思議な空気感をもたらしてゆく。そこまでの重さを抱えてきた音楽が、抜けたような浮遊感を伴いながら進行してゆく。
 何か様々なことが起こり、そして過ぎ去ってゆく中で、重量さを失い、漂うってゆくような感じがある楽章なのだろうか。弦のピチカート、ヴァイオリンソロによる力の抜けたような穏やかな表情の旋律、そこに鐘の音やチェレスタの響きがまた不思議な広がりを生みながら、ゆっくりと消えてゆく。
 音が消えていった後、何とも言えない空気が自分の中に残った。そして終演後もしばしこの第5楽章の浮遊感ある不思議な空間が、妙に残り続けていた。

2024/2/4 NHKホール
指揮:井上道義 N響定期公演
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