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スタンリー・タレンタインのCTI時代 [ジャズ関係]

 好みとは言い切れないのだが、なぜかよく聞く音楽というのがある。スタンリー・タレンタインのサックスはその区分に該当してたのかもしれない。

 振り返ってみると、意識的に選択したことは少ないが、なぜか選んでしまって聞いたことは多い。そのときの気分がはっきりせず、「う~ん、何かサックスのような感じか」という時に、チョイスしてしまうケース。テナーサックスで迷ったら、タレンタイン。

 今回取り上げたのは彼の70年前半のCTIレーベルにおける「Sugar」と「Cherry 」の2作。60年代はブルーノートにかなりのリーダーアルバムを録音してるが、その後のCTIでの音は時代的な変化もあるので、随分違っている。ジャケットも濃厚で妖艶なムードを醸し出すところにも、時代の変化を感じさせる。

 それでも最初のCTIレーベルでの録音作「Sugar」は、サックス、トランペット、オルガン、ギターが入り、60年代のブルーノート的なサウンドの流れを踏襲してる部分は強い。中でもコルトレーンの「Impressions」を演奏し、厚みのある音ではあるのだが、コンガが入るので、音のシリアスさは低減されている。またこのアルバムで存在感を感じたのは、ジョージ.ベンソンの濃い目のギター音、結構健闘してるのではないだろうか。

 一方、この後に発表された「Cherry 」は、かなり感触が異なる。その要因は何といってもミルト・ジャクソンとの共演にある。
 ミルト・ジャクソンはこの時点でMJQを含め相当なキャリアがあり、タレンタインの名義アルバムとはいえ、全体的には2人のミュージシャンの共演作というところか。(ジャケットにも「Cherry with Milt Jackson」となってる)

 タレンタインのサックスにミルト・ジャクソンのヴィブラフォンの音が加わることで、ブルージーな空気とまろやかな音色がいい塩梅の変化をもたらす。さらにエレクトリック・ピアノの音が加わり、この後展開してゆくフュージョン的なサウンド要素を感じさせる。60年代のサウンドとは違った空気をもたらすエレクトリック・ピアノ、この演奏はボブ・ジェームス。
 
 そうした多様な編成や時代の変化の中、スタンリー・タレンタインのサックスは太い骨組みの、どっしりとしたサウンドを聞かせてくれる。この音色からにじみ出てくる味わいを、長い間自分の中ですくい上げられなかったが、最近しっくりくるようになった。時間は要したが、派手さはなく、どこかまろやかな音色が最近心地よい。
 
 なお、この2枚アルバムで脇役ながら、「Sugar」のジョージ.ベンソンと「Cherry」のボブ・ジェームスの2人とも存在感を見せているが、この後の70年中盤以降のフュージョンサウンドへの流れの伏線にもなってるのか、そこも面白く感じられた。

CD:Sugar / Stanley Turrentine (CTI) 1970年
   Cherry/ Stanley Turrentine (CTI) 1972年 with Milt Jackson

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